彼女はとてもかわいらしく、声優志望で事務所からも後押しされる有望な女性でした。
美人ではないけれど可愛いのです。当然早くから彼氏がおり、恋愛経験も10代後半にして豊かでした。

私が彼女と仲良くなったのは彼女と同じ声優学校で同じ仕事に抜擢されたときでした。
最初は仕事の話で盛り上がっていたのですが次第にプライベートも話すようになり、そうした中で恋愛についても相談を受けるようになりました。

当然、彼女の方が恋愛経験は豊富です。
ですが、女性には聞いて貰えるだけでいい時があります。
そうしたタイミングで私は話しやすい相手だったのでしょう。

ある日「今の彼と別れようと思う」と相談を受けました。
「今の彼?」現在彼氏がいることもその時知った私ですが、何より驚いたのはそれを駅のホームで、しかも彼の目の前で私に話したことでした。

私は彼女と彼を交互に見ました。
彼が静かに少し距離をとり離れました。
すると彼女は言い出しました。

「今の彼とは合わなくなったので別れるんだけど、彼氏ができるまでは付き合ってるの」

私は自分の耳を疑いました。
今の彼とは別れてる。
話もついてる。しかし、新しい彼ができるまで横に男性がいないのは寂しくて耐えられないから新しい彼氏ができるまで彼には彼氏でいてもらう、というのです。

本当の自分を出せなかった

今まで付き合った彼氏の中で、彼はちょっと違っていのだ。
なぜか、彼に嫌われるのがイヤで、私は本当の自分を出せずにいたのだ。

バージンじゃないのに、バージンだといってしまうは、タバコを吸うのに、彼氏の前では吸わない…など、ひたすら真面目な女を演技していたのだ。

彼氏は、とても真面目な人で私をとても大切にしてくれたのだ。
私がバージンだと信じ込み、私がOKというまでは、手を出さないからと言ってくれたりする人だったのだ。

そんなふうに言われると、余計に本当のことを言いだせなくて、嘘をついている自分がイヤで仕方がなかったのだ。
それに、いつまでも隠し通せるわけがなのである。

「いつかは、バレる」と思ったら、胸が張り裂けそうになるのだ。
でも、終わりはあっけなく、やってきたのだ。

そう、私が、友人達と遊んでいる姿を偶然、彼氏の友達が見てしまい、彼に言ったのだ。
全てがバレて、この恋は終わったのだ。