「え?」と言うと「今日は気になっていた人が一緒に来ていて、少しでも可愛い格好にしようと思って。
ショートパンツも初めて買ったんですよ。
でもなんか彼女さんと思われる人も一緒に来ちゃって、私何しているんだろーって嫌になって飲みに走っていたらこんな事になってしまってあはは、と彼女は笑いながら一気に話した。
泣かないように頑張っているようにも見えた。
俺はあっという間に心を持って行かれた。
強がりであろう彼女が、知らない俺にだからこそ話せた心の中の気持ちをもっとたくさん理解してあげたかったし、自分の方にその気持ちを向けてほしいとまで一瞬で思ったのだ。
一目惚れだったのかもしれない。
でも彼女はこう続けた。
「でもなんか諦められないんですよ!今日は飲んでスッキリして、明日からまた自分を磨いて彼に認めてもらえるように私頑張る事に決めました!」
俺は一瞬で恋に堕ち、気持ちを伝える前にあっという間に振られてしまった。
芯の強い彼女をいつか自分の物にしたいと、俺も強く思った。
あれから1年が経ち、俺はまたこのビアガーデンに来ている。
そして今日、あの彼女を見かけた。
あの彼と2人で楽しそうに乾杯していた。
見事の玉砕であるが、彼女の策士ぶりは薄々感づいていたので、なんとかモノにするのではと思っていた。
作戦勝ちです。
何かが私を遮る
珍しく酔っ払ってる?と思いつつも
「そうそう。俺はひとすじなの!」と答える。
すると「じゃぁよかった!こっち来て下さい!」と言われて斜め向かいのラブホテルに引っ張られた。
何が起きているのかわからない、なされるがまま部屋まで連れて行かれ、抱きつかれた。
キスもされた。
「いきなりでごめんなさい。ずっと我慢していたんですが今日だけは許して下さい。
先輩には不倫って気持ちになる隙がないみたいなんで、これは不倫じゃないですからね!私の勝手なわがままだと思って、今日は多めに見てください!」
と言われ服を脱がされた。
そういう事だったのか…と思ったのも遅く、ひとすじだと言っていた俺も彼女が引いた不倫じゃない、という線でどこか安心しながら彼女を抱いてしまった。
確か、気持ちは込めないように必死だった。
終電を逃した俺達は次の日は時間差で出勤した。
同じワイシャツなのがバレないかな?となんだか一日中落ち着かなかった。
彼女は何事もなかったかのように私に話しかけ、そっとメモ用紙を渡してきた。
【まだ奥さんに気持ちがあるうちは、また会って下さいね】と書いてあった。
うまい事やられたのかもしれない。
でも俺は、次は着替えを一つカバンにしまっておこう。
なんて考えだしていた。
しかし、大きな障壁がある。
相手はひとりではないということなのだ。